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Module 1-3 - Section 4: キャッシュフロー計算書

セクション情報

項目 内容
モジュール Module 1-3: 簿記・会計の基礎
前提セクション Section 2, Section 3
想定学習時間 2.5時間

導入

Section 2 および Section 3 で、複式簿記の仕組みと、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)の構造を学んだ。これらの財務諸表は企業の財政状態と経営成績を示すが、「現金がどれだけあるか」「現金がどのように動いたか」を直接的に把握するには十分でない。P/L上で利益が計上されていても、売掛金の回収が遅延し手元に現金がなければ、企業は支払不能に陥りうる。このような「利益とキャッシュの乖離」を可視化するために、キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement, C/F)が必要となる。

本セクションでは、C/Fの意義・3区分の構造・表示方法(直接法と間接法)・パターン分析・フリーキャッシュフローの概念を扱い、企業の資金動態を読み解く力を養う。


なぜキャッシュフロー計算書が必要か

利益とキャッシュの乖離

P/Lにおける利益は、発生主義(Accrual Basis)に基づいて計算される。発生主義とは、現金の受払いにかかわらず、経済的事象が発生した時点で収益・費用を認識する原則である。たとえば、商品を掛け(後払い条件)で販売した場合、売上は計上されるが現金は未入金のままとなる。また、Section 2 で学んだ減価償却は費用として計上されるが、実際の現金支出はない。こうした要因により、P/L上の利益と企業が保有する現金の増減は一致しない。

Key Concept: 発生主義(Accrual Basis) 現金の受払いの時点ではなく、経済的事象が発生した時点で収益・費用を認識する会計原則。対概念として、現金の受払い時点で認識する現金主義(Cash Basis)がある。

黒字倒産の問題

「黒字倒産」とは、P/L上は利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が不足して支払不能に陥り、倒産する現象である。

典型的なメカニズムは以下の通りである。企業が大口の受注を獲得し、売上を計上する。しかし売掛金の回収サイクルが長く(例: 90日後)、一方で仕入先への支払いは短期(例: 30日後)に到来する。この入金と出金のタイムラグにより、P/L上は黒字であっても資金繰りが破綻する。

実際の事例として、江守グループホールディングス(福井県・東証一部上場企業)は、5期連続で経常利益が黒字かつ増収増益であったにもかかわらず、中国にある子会社の売掛金回収が困難となり、2015年に民事再生法の適用を申請した。P/Lだけでは捉えきれないリスクが、C/Fには明瞭に表れていた。

このように、B/SとP/Lだけでは企業の「支払能力」「資金の持続可能性」を十分に評価できないため、現金の動きを直接的に示すC/Fが、財務三表の一角として不可欠な位置を占める。


キャッシュフロー計算書の3区分

C/Fは、一定期間における現金及び現金同等物(Cash and Cash Equivalents)の増減を、企業活動の性質に応じて3つの区分に分類して表示する。Section 1 で企業活動を営業活動・投資活動・財務活動の3つに分類したが、C/Fの3区分はこの分類に直接対応する。

Key Concept: 現金及び現金同等物(Cash and Cash Equivalents) 手許現金、要求払預金(普通預金・当座預金等)、および取得日から満期日までの期間が3か月以内の短期投資(定期預金・コマーシャルペーパー等)の総称。C/Fにおける「キャッシュ」はこの範囲を指す。

営業活動によるキャッシュフロー

Key Concept: 営業活動によるキャッシュフロー(Operating Cash Flow, OCF) 企業の主たる営業活動(商品の販売、サービスの提供、原材料の購入、人件費の支払い等)から生じるキャッシュの増減を示す区分。企業が本業で現金を生み出す力を表す。

営業C/Fに含まれる主な項目は以下の通りである。

流入(プラス) 流出(マイナス)
商品・サービスの販売による収入 原材料・商品の仕入代金の支払
利息・配当金の受取 人件費の支払
販売費及び一般管理費の支払
法人税等の支払

営業C/Fがプラスであることは、企業が本業で現金を稼得していることを意味し、企業の持続可能性を判断する上で最も重要な指標の一つである。営業C/Fが継続的にマイナスの企業は、外部からの資金調達なしには事業を維持できず、存続リスクが高い。

投資活動によるキャッシュフロー

Key Concept: 投資活動によるキャッシュフロー(Investing Cash Flow, ICF) 将来の利益獲得・資産維持を目的とした固定資産や有価証券の取得・売却等に伴うキャッシュの増減を示す区分。

投資C/Fに含まれる主な項目は以下の通りである。

流入(プラス) 流出(マイナス)
有形固定資産の売却による収入 有形固定資産の取得による支出
有価証券の売却による収入 有価証券の取得による支出
貸付金の回収 貸付による支出

成長・投資を行っている企業では、設備投資や研究開発投資により投資C/Fがマイナスとなることが一般的である。逆に投資C/Fが大幅にプラスの場合、資産売却による資金捻出を意味する可能性があり、その背景を慎重に検討する必要がある。

財務活動によるキャッシュフロー

Key Concept: 財務活動によるキャッシュフロー(Financing Cash Flow, FCF-fin) 資金調達および返済に関するキャッシュの増減を示す区分。借入・社債発行・株式発行による資金調達と、借入返済・社債償還・配当金支払等が含まれる。

財務C/Fに含まれる主な項目は以下の通りである。

流入(プラス) 流出(マイナス)
短期・長期借入れによる収入 借入金の返済
社債の発行による収入 社債の償還
株式の発行による収入 自己株式の取得
配当金の支払

C/Fの全体構造

3区分の合計がその期間における現金及び現金同等物の純増減額となり、期首残高に加算して期末残高を算出する。

期首の現金及び現金同等物残高
+ 営業活動によるキャッシュフロー
+ 投資活動によるキャッシュフロー
+ 財務活動によるキャッシュフロー
= 期末の現金及び現金同等物残高
graph TD
    subgraph CF ["キャッシュフロー計算書"]
        OCF["営業活動によるC/F<br/>本業での現金創出力"]
        ICF["投資活動によるC/F<br/>将来への投資・資産売却"]
        FCF_fin["財務活動によるC/F<br/>資金調達・返済"]
    end
    OCF -->|合算| NET["現金及び現金同等物の増減額"]
    ICF -->|合算| NET
    FCF_fin -->|合算| NET
    BEG["期首残高"] -->|加算| END_BAL["期末残高"]
    NET -->|加算| END_BAL

直接法と間接法

営業活動によるC/Fの表示方法には、直接法(Direct Method)と間接法(Indirect Method)の2種類がある。投資活動と財務活動のC/Fについては、いずれの方法でも直接法で表示する。

Key Concept: 直接法(Direct Method) 営業活動に係るキャッシュの流入・流出を、取引の種類(商品販売収入、仕入支出、人件費支出等)ごとに総額で表示する方法。キャッシュの動きの実態が明瞭に把握できる。

Key Concept: 間接法(Indirect Method) 税引前当期純利益を出発点とし、非資金損益項目(減価償却費等)や営業外・特別損益項目、運転資本の増減を加減算して、営業活動によるキャッシュフローを算出する方法。P/Lとの対応関係が明確になる。

両者の比較

観点 直接法 間接法
表示方法 取引種類ごとの総額表示 利益からの調整計算
情報の有用性 キャッシュの流れの実態が明瞭 利益とキャッシュの差異原因が明瞭
作成の容易さ 困難(個別取引の集計が必要) 容易(B/SとP/Lから作成可能)
国内企業の採用状況 少数 大多数
会計基準上の扱い 選択可能 選択可能

日本の会計基準(企業会計基準委員会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」)では、いずれの方法も認められているが、実務上は間接法を採用する企業が圧倒的多数を占める。これは、間接法の方がB/SとP/Lから作成でき、作成コストが低いためである。国際会計基準(IAS 7)も両方を認めているが、直接法を推奨している。

直接法の表示例

I. 営業活動によるキャッシュフロー
    営業収入                    10,000
    原材料又は商品の仕入支出     △6,000
    人件費支出                  △2,000
    その他の営業支出            △1,000
    小計                         1,000
    利息及び配当金の受取額           50
    利息の支払額                   △30
    法人税等の支払額              △200
    営業活動によるキャッシュフロー   820

間接法の表示例

I. 営業活動によるキャッシュフロー
    税引前当期純利益               800
    減価償却費                     300
    貸倒引当金の増加額               20
    受取利息及び受取配当金          △50
    支払利息                        30
    有形固定資産売却益            △100
    売上債権の増加額              △200
    棚卸資産の減少額                50
    仕入債務の増加額               150
    小計                         1,000
    利息及び配当金の受取額           50
    利息の支払額                   △30
    法人税等の支払額              △200
    営業活動によるキャッシュフロー   820

上記のように、直接法と間接法で異なるのは「小計」までの表示方法であり、小計以降の項目と最終的な営業C/Fの金額は同一である。


間接法の調整プロセス

間接法は実務上最も広く用いられるため、その調整ロジックを詳細に理解することが重要である。

調整の基本的考え方

間接法では、P/L上の税引前当期純利益を出発点として、「利益には計上されているが現金の動きがない項目」または「現金は動いたが利益には反映されていない項目」を加減算し、営業活動から生じた実際のキャッシュの増減額に到達する。

調整項目は大きく3つに分類される。

1. 非資金損益項目の調整

P/L上の費用・収益のうち、現金の入出金を伴わないものを調整する。

項目 調整方向 理由
減価償却費 加算(+) P/Lでは費用計上されるが、現金支出を伴わないため
貸倒引当金の増加額 加算(+) 将来の損失見込みとして費用計上されるが、現金支出はないため
のれん償却額 加算(+) 減価償却費と同様

減価償却費の加算は、間接法で最も重要な調整項目の一つである。Section 2 で学んだ通り、減価償却は固定資産の取得原価を耐用年数にわたって費用配分する手続であり、現金支出は取得時に一度だけ発生する。しかしP/L上は毎期費用が計上されるため、税引前当期純利益はその分だけ実際のキャッシュフローより少なくなっている。これを修正するために加算する。

2. 営業外損益・特別損益の除外

営業活動以外の区分に属する損益項目を除外する。これらは投資C/Fまたは財務C/Fで処理されるため、営業C/Fからは除く必要がある。

項目 調整方向 理由
受取利息・受取配当金 減算(△) 投資活動または小計以下で別途処理
支払利息 加算(+) 財務活動または小計以下で別途処理
有形固定資産売却益 減算(△) 投資活動のC/Fで処理するため
有形固定資産売却損 加算(+) 投資活動のC/Fで処理するため

3. 運転資本の変動

営業活動に関連するB/S項目(売上債権、棚卸資産、仕入債務等)の増減を調整する。

項目 増加した場合 減少した場合
売上債権(売掛金・受取手形) 減算(△) 加算(+)
棚卸資産 減算(△) 加算(+)
仕入債務(買掛金・支払手形) 加算(+) 減算(△)

売上債権の増加は、売上として利益に計上されたが現金が未回収であることを意味するため、キャッシュフローから減算する。棚卸資産の増加は、現金を支出して在庫を取得したが、まだ費用化(売上原価化)されていないことを意味する。仕入債務の増加は、費用(売上原価)として利益を減少させたが、実際には現金を支出していないことを意味するため、加算する。

間接法の調整プロセス図

graph TD
    START["税引前当期純利益"] --> A["非資金損益の調整"]
    A -->|"+減価償却費<br/>+貸倒引当金増加額<br/>+のれん償却額"| B["営業外・特別損益の除外"]
    B -->|"△受取利息・配当金<br/>+支払利息<br/>△固定資産売却益<br/>+固定資産売却損"| C["運転資本の変動"]
    C -->|"△売上債権増加<br/>△棚卸資産増加<br/>+仕入債務増加"| SUBTOTAL["小計"]
    SUBTOTAL --> D["利息・配当金の受払"]
    D --> E["法人税等の支払"]
    E --> RESULT["営業活動によるC/F"]

具体的な数値例

以下に、間接法による営業C/F算出の具体例を示す。

前提条件:

項目 金額(百万円)
税引前当期純利益 500
減価償却費 120
貸倒引当金の増加額 10
受取利息 15
支払利息 25
有形固定資産売却益 30
売上債権の増加額 80
棚卸資産の減少額 20
仕入債務の増加額 40
利息及び配当金の受取額 15
利息の支払額 25
法人税等の支払額 150

間接法による計算:

  税引前当期純利益              500
  減価償却費                   +120
  貸倒引当金の増加額            +10
  受取利息                      △15
  支払利息                      +25
  有形固定資産売却益            △30
  売上債権の増加額              △80
  棚卸資産の減少額              +20
  仕入債務の増加額              +40
  小計                          590
  利息及び配当金の受取額         +15
  利息の支払額                  △25
  法人税等の支払額             △150
  営業活動によるキャッシュフロー  430

この例では、税引前当期純利益は500百万円であるが、営業C/Fは430百万円となった。主な差異要因は以下の通りである。 - 減価償却費120百万円の加算(現金支出なき費用) - 売上債権増加80百万円の減算(利益は計上されたが現金未回収) - 法人税等の支払150百万円の減算


キャッシュフローパターン分析

C/Fの3区分について、各区分がプラス(+)かマイナス(△)かの組み合わせにより、企業の経営状態を類型化して分析する手法がキャッシュフローパターン分析である。3区分×2パターンで理論上8つの類型が存在する。

主要なパターン

パターン 営業C/F 投資C/F 財務C/F 企業の典型的状況
健全型 本業で稼ぎ、適度に投資し、借入返済・配当も行う成熟企業
積極投資型 本業の稼ぎに加え外部調達も行い、積極的に投資する成長企業
財務改善型 本業の稼ぎと資産売却で借入返済を進める企業
転換期型 資産売却・資金調達を含め全体でキャッシュを積み増す過渡期の企業
危機対応型 本業は赤字だが、資産売却と借入で資金繰りを維持。要注意
縮小均衡型 本業赤字で資産売却により借入返済。事業縮小の可能性
勝負型 本業赤字だが積極投資を外部資金で賄う。ベンチャー企業に多い
深刻型 全区分でマイナス。過去の蓄積を取り崩して存続。極めて危険

パターン分析の読み方

最も注目すべきは営業C/Fの符号である。 営業C/Fがプラスであれば本業で現金を生み出しており、企業の基盤は安定している。営業C/Fがマイナスの場合、本業で現金を失っており、他の手段(資産売却・借入等)で補填しなければならず、持続可能性に疑問が生じる。

ただし、パターンの良否は企業のライフステージや業種によって異なる。たとえば「勝負型」(営業△・投資△・財務+)は、スタートアップやベンチャー企業では創業期の典型的なパターンであり、将来の営業C/F黒字化を前提として投資を行っている段階と解釈できる。一方、成熟企業がこのパターンを示す場合は、本業の競争力低下を示唆する深刻なシグナルとなりうる。

パターン分析の具体例

成熟優良企業の例:

  営業活動によるC/F     +800
  投資活動によるC/F     △300
  財務活動によるC/F     △400
  現金の増減額          +100
本業で800の現金を生み出し、300を設備投資に充て、400を借入返済・配当支払に充てている。手元資金も100増加しており、安定した経営状態を示す(健全型)。

急成長企業の例:

  営業活動によるC/F     +500
  投資活動によるC/F   △1,200
  財務活動によるC/F     +800
  現金の増減額          +100
本業で500の現金を生み出しているが、それを大幅に上回る1,200の投資を実行。不足分800を外部から調達している(積極投資型)。投資の回収が見込めるかが今後の鍵となる。

経営危機企業の例:

  営業活動によるC/F     △200
  投資活動によるC/F     +500
  財務活動によるC/F     +100
  現金の増減額          +400
本業で200の現金流出が発生し、保有資産500を売却して資金を確保している(危機対応型)。一見するとキャッシュは増加しているが、資産売却は一時的な対処であり、本業の立て直しが急務である。


フリーキャッシュフロー

Key Concept: フリーキャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF) 企業が事業活動と必要な投資を行った後に、自由に使途を決定できるキャッシュの額。一般に「営業活動によるキャッシュフロー + 投資活動によるキャッシュフロー」で簡便的に算出される。

FCFの意義

FCFは、企業が生み出したキャッシュのうち、事業維持に必要な投資を差し引いた後の「自由に処分可能な資金」を意味する。この資金は以下の用途に充てることができる。

  • 借入金の返済
  • 配当金の支払い
  • 自己株式の取得
  • 新規事業への投資
  • 内部留保の積み増し

FCFがプラスであれば、企業は外部からの追加的な資金調達なしに、債務返済や株主還元を行う財務的余力を有していることを意味する。

FCFの計算

最も簡便な計算式は以下の通りである。

FCF = 営業活動によるC/F + 投資活動によるC/F

ただし、投資活動には戦略的な大型投資(M&A等)のような一時的項目も含まれるため、より精緻な分析では、投資C/Fのうち事業維持に必要な設備投資(資本的支出、Capital Expenditure: CAPEX)のみを控除する場合もある。

FCF = 営業活動によるC/F − 資本的支出(CAPEX)

FCFと企業価値評価

FCFは企業価値評価において中心的な役割を果たす。割引キャッシュフロー法(Discounted Cash Flow Method, DCF法)は、企業が将来生み出すと予測されるFCFを適切な割引率(加重平均資本コスト、WACC)で現在価値に割り引くことで、企業の本源的価値を算出する手法である。M&Aにおける企業価値算定や株式の理論価格の算出に広く用いられる。この内容は、後のファイナンス関連モジュールで詳細に扱う。


まとめ

  • B/SとP/Lだけでは企業の現金動態を把握できない。発生主義に基づくP/L上の利益と実際のキャッシュの動きは乖離しうるため、C/Fが不可欠である
  • C/Fは営業活動・投資活動・財務活動の3区分で構成され、各区分が企業活動の異なる側面を反映する
  • 営業C/Fの表示方法には直接法と間接法があり、実務上は間接法が主流である。間接法は税引前当期純利益から出発し、非資金項目・運転資本の変動等を調整してキャッシュフローを算出する
  • 3区分の符号の組み合わせによるパターン分析は、企業の経営状態を簡便に把握する有用な手法であるが、企業のライフステージや業種を考慮した解釈が必要である
  • FCFは企業が自由に処分可能なキャッシュを示し、企業価値評価(DCF法)の基礎となる
  • 次のSection 5では、B/S・P/L・C/Fの3つの財務諸表がどのように相互に関連するかを体系的に学ぶ

用語集(Glossary)

用語 英語表記 定義
発生主義 Accrual Basis 現金の受払い時点ではなく、経済的事象が発生した時点で収益・費用を認識する会計原則
現金及び現金同等物 Cash and Cash Equivalents 手許現金、要求払預金、および取得日から満期日まで3か月以内の短期投資の総称
営業活動によるキャッシュフロー Operating Cash Flow 企業の主たる営業活動から生じるキャッシュの増減
投資活動によるキャッシュフロー Investing Cash Flow 固定資産・有価証券の取得・売却等に伴うキャッシュの増減
財務活動によるキャッシュフロー Financing Cash Flow 資金調達・返済に関するキャッシュの増減
直接法 Direct Method 営業C/Fを取引種類ごとの総額で表示する方法
間接法 Indirect Method 税引前当期純利益から調整計算により営業C/Fを算出する方法
フリーキャッシュフロー Free Cash Flow 営業C/Fから事業維持に必要な投資を差し引いた、自由に処分可能なキャッシュ
資本的支出 Capital Expenditure (CAPEX) 事業維持・拡大のための固定資産の取得に係る支出
割引キャッシュフロー法 Discounted Cash Flow Method (DCF) 将来のFCFを割引率で現在価値に換算し、企業価値を算出する手法

確認問題

Q1: P/L上で利益が計上されているにもかかわらず、企業が倒産する「黒字倒産」はなぜ起こるのか。発生主義会計の特徴と関連づけて説明せよ。

A1: 発生主義会計では、現金の受払いにかかわらず経済的事象の発生時点で収益・費用を認識する。そのため、売上は計上されるが売掛金の回収が遅延して現金が入らない場合や、在庫への投資で現金が拘束される場合、P/L上は黒字であっても手元の現金が不足する。支払義務(仕入代金、人件費、借入返済等)の期日に現金が用意できなければ、企業は支払不能に陥り倒産する。これが黒字倒産のメカニズムであり、利益と現金の乖離が根本原因である。

Q2: 間接法において、減価償却費を税引前当期純利益に「加算」する理由を説明せよ。

A2: 減価償却費は、固定資産の取得原価を耐用年数にわたって費用配分する手続であり、計上時に現金の支出を伴わない(現金支出は取得時に一度だけ発生する)。P/L上では費用として利益を減少させているが、実際にはキャッシュの流出がないため、税引前当期純利益は実際のキャッシュフローよりその分だけ過少に表示されている。これを修正するために、間接法では減価償却費を加算して、現金ベースの営業キャッシュフローに近づける。

Q3: ある企業のC/Fが「営業C/F: +、投資C/F: △、財務C/F: +」というパターンを示している。この企業はどのような経営状況にあると推定できるか。また、投資の回収に関してどのようなリスクが考えられるか。

A3: このパターンは「積極投資型」に該当する。企業は本業で現金を生み出している(営業C/F: +)が、それを上回る規模で積極的に設備投資等を行っている(投資C/F: △)。不足分は借入や社債発行等の外部資金調達で賄っている(財務C/F: +)。成長企業に典型的なパターンである。リスクとしては、大規模投資が将来の営業C/Fの増加に結びつかなかった場合、過大な有利子負債を抱えたまま返済原資を確保できず、財務体質が悪化する可能性がある。投資判断の妥当性とROI(投資利益率)の検証が重要となる。

Q4: フリーキャッシュフロー(FCF)の簡便的な計算式を示し、FCFがプラスであることが企業にとってどのような意味を持つか説明せよ。

A4: FCFの簡便的な計算式は「FCF = 営業活動によるC/F + 投資活動によるC/F」である。FCFがプラスであるということは、企業が本業で稼いだキャッシュから事業維持・拡大に必要な投資を行った後にもなお、自由に使える資金が残っていることを意味する。この資金は借入金の返済、配当金の支払い、自己株式の取得、新規事業への投資等に充当できる。つまり、FCFがプラスの企業は外部からの追加的な資金調達に頼ることなく、自律的に財務上の意思決定を行える余力を持っている。

Q5: 間接法において、売上債権(売掛金)が増加した場合にキャッシュフローから「減算」する理由と、仕入債務(買掛金)が増加した場合に「加算」する理由を、それぞれ説明せよ。

A5: 売上債権の増加は、P/L上で売上(収益)として利益に計上されたが、対応する現金がまだ回収されていないことを意味する。利益には含まれているがキャッシュの流入がないため、営業C/Fから減算して調整する。一方、仕入債務の増加は、仕入れた商品・材料の代金(費用)としてP/L上で利益を減少させているが、実際にはまだ現金を支払っていないことを意味する。利益は減少しているがキャッシュの流出はないため、営業C/Fに加算して調整する。いずれも、発生主義による利益と現金主義によるキャッシュフローの差異を埋めるための調整である。