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Module 2-1 - Section 3: リーダーシップ論

セクション情報

項目 内容
モジュール Module 2-1: 経営組織論・組織行動論
前提セクション Section 2(モチベーション理論)
想定学習時間 2.5時間

導入

Section 2 では、組織における個人の行動を駆動するモチベーション理論を検討した。モチベーションが「なぜ人は動くのか」という問いに答えるものであるとすれば、リーダーシップは「誰が、どのようにして人を動かすのか」という問いに応える概念である。組織が目標を達成するためには、構成員の動機づけだけでなく、方向性を示し、協働を促す影響力の行使が不可欠となる。

リーダーシップ研究は20世紀初頭から現在に至るまで、「優れたリーダーとはどのような人物か」(特性論)、「優れたリーダーは何をするのか」(行動論)、「どのような状況でどのリーダーシップが有効か」(条件適応論)、「リーダーはいかにして組織を変革するか」(変革型リーダーシップ)へとパラダイムを変遷させてきた。本セクションでは、この歴史的展開を軸にリーダーシップ研究の主要理論を体系的に整理する。


リーダーシップの定義とマネジメントとの区別

Key Concept: リーダーシップ(Leadership) 集団の目標達成に向けて他者に影響を与えるプロセス。公式的な権限の有無にかかわらず、ビジョンの提示・方向づけ・動機づけを通じて人々の行動を導く機能を指す。

リーダーシップの定義は研究者によって多様であるが、共通する要素は「影響力の行使」「集団的目標の存在」「プロセスとしての性質」の三点である。Gary Yukl はリーダーシップを「集団の目標達成のために他者の活動に影響を与えるプロセス」と定義しており、この定義が現代の組織行動論では広く受容されている。

リーダーシップとマネジメントはしばしば混同されるが、John P. Kotter(1990)は両者を明確に区別した。マネジメントとは計画策定・予算管理・組織編成・問題解決といった「複雑性への対処」(coping with complexity)であり、リーダーシップとはビジョンの設定・人心の統合・動機づけと鼓舞といった「変化への対処」(coping with change)である。組織が効果的に機能するためには、両者が相互補完的に発揮される必要がある。


特性論(Trait Approach)

Key Concept: 特性論(Trait Approach) 優れたリーダーに共通する個人的資質・特性を特定しようとするアプローチ。「リーダーは生まれつきのものである」(Great Man Theory)という前提に立つ初期のリーダーシップ研究の潮流。

リーダーシップ研究の最初期(1900年代〜1940年代)を支配したのが特性論である。Thomas Carlyle の「偉人論」(Great Man Theory)に端を発し、リーダーには知能・自信・決断力・誠実さ・社交性といった生得的特性が備わっているとの仮定のもと、多くの実証研究が行われた。

しかし、Ralph Stogdill(1948)のメタ分析は、この仮定に決定的な疑問を投げかけた。Stogdill は124の特性研究をレビューし、状況を超えて一貫してリーダーシップと結びつく普遍的特性は存在しないと結論づけた。この研究は特性論の限界を明示し、リーダーシップ研究の焦点を「リーダーの属性」から「リーダーの行動」へと転換させる契機となった。

ただし、特性論は完全に否定されたわけではない。Timothy A. Judge ら(2002)のメタ分析では、ビッグファイブ性格特性のうち外向性・誠実性・開放性がリーダーシップの発現と有意に相関することが示されている。現代では、特性は「リーダーシップの十分条件」ではないが「促進要因」として位置づけられている。


行動論(Behavioral Approach)

Key Concept: 行動論(Behavioral Approach) リーダーの行動パターンに着目し、効果的なリーダーシップ・スタイルを特定しようとするアプローチ。「リーダーシップは学習可能である」という前提に立つ。

特性論の限界を受けて1940年代後半から1960年代にかけて台頭したのが行動論である。行動論は「リーダーが何者であるか」ではなく「リーダーが何をするか」に焦点を当て、効果的なリーダーシップ行動の類型化を目指した。

オハイオ州立研究

オハイオ州立大学(1945年〜)のリーダーシップ研究プログラムは、リーダーの行動を因子分析によって二つの独立した次元に整理した。

  • 配慮(Consideration): 部下の感情・福利厚生に関心を示し、相互信頼・尊重に基づく人間関係を構築する行動。部下の意見を傾聴し、個人的問題にも配慮する。
  • 構造づくり(Initiating Structure): 目標達成に向けて役割を明確化し、業務手順を体系化し、スケジュールを管理する行動。課題遂行を方向づける。

この二次元は独立しており、一方を高めることが他方を犠牲にすることを意味しない。高配慮・高構造のリーダーが最も効果的であるとの知見が示されたが、後続の研究では状況要因によって最適な組み合わせが異なることも明らかになった。

ミシガン研究

ミシガン大学の社会調査研究所(Institute for Social Research)は、Rensis Likert を中心に1950年代から並行してリーダーシップ研究を展開した。ミシガン研究は、リーダーの行動志向を以下の二類型に整理した。

  • 従業員志向(Employee-Oriented): 部下の人間的ニーズに関心を持ち、個人の成長・発達を支援する志向。
  • 生産志向(Production-Oriented): 業務の技術的側面・効率性に関心を持ち、成果・生産性を重視する志向。

ミシガン研究は、従業員志向のリーダーの方が生産性・職務満足の双方において優れた成果を上げる傾向があると結論づけた。オハイオ研究の「配慮」と「従業員志向」、「構造づくり」と「生産志向」はそれぞれ概念的に対応しており、独立した二つの研究グループが類似の結論に到達したことは、行動論の信頼性を高める結果となった。

マネジリアル・グリッド

Robert R. Blake と Jane S. Mouton(1964)は、オハイオ・ミシガン両研究の知見を統合し、「人への関心」(Concern for People)と「業績への関心」(Concern for Production)の二軸で構成される9×9のグリッド・モデルを開発した。このモデルでは、以下の五つの代表的リーダーシップ・スタイルが識別される。

スタイル 座標 特徴
無関心型(Impoverished) (1,1) 人にも業績にも関心が低い。最低限の努力で地位を維持
カントリークラブ型 (1,9) 人への関心は高いが業績への関心が低い。快適な職場環境の維持を優先
権限服従型(Authority-Compliance) (9,1) 業績への関心は高いが人への関心が低い。効率・成果を一方的に追求
中道型(Middle-of-the-Road) (5,5) 両次元の中程度のバランスを志向。妥協的
チーム型(Team Management) (9,9) 人と業績の双方に高い関心を持ち、信頼・尊重を基盤として成果を追求

Blake と Mouton は (9,9) のチーム型が最も効果的であると主張した。しかし、この規範的主張は「あらゆる状況で最善のスタイルが一つ存在する」という前提に立つものであり、後述する条件適応論からの批判を受けることになる。

timeline
    title リーダーシップ論の歴史的展開
    1900s-1940s : 特性論 Trait Approach
                : 偉人論 Great Man Theory
                : Stogdill のメタ分析で限界露呈
    1940s-1960s : 行動論 Behavioral Approach
                : オハイオ州立研究
                : ミシガン研究
                : Blake-Mouton マネジリアル・グリッド
    1960s-1980s : 条件適応論 Contingency Approach
                : フィードラー・モデル
                : SL理論
                : パス・ゴール理論
    1980s-現在 : 変革型リーダーシップ
              : Burns の変革型・交流型の区別
              : Bass の4I モデル
              : サーバント・リーダーシップ
              : オーセンティック・リーダーシップ

条件適応論(Contingency Approach)

Key Concept: 条件適応的リーダーシップ(Contingency Leadership) リーダーシップの有効性は状況変数に依存するとし、状況とリーダーシップ・スタイルの適合(fit)を重視するアプローチ。「唯一最善のリーダーシップ・スタイルは存在しない」という前提に立つ。

行動論が「最善のリーダーシップ・スタイル」を特定しようとしたのに対し、1960年代以降の条件適応論は「どのような状況でどのスタイルが有効か」を問うた。これは経営戦略論・組織論におけるコンティンジェンシー理論(→ Module 1-4 参照)のリーダーシップ版に相当する。

フィードラーのコンティンジェンシー・モデル

Fred E. Fiedler(1967)は、リーダーシップの有効性がリーダーのスタイルと「状況の好意性」(situational favorableness)の適合に依存するとした。

リーダーシップ・スタイルの測定: Fiedler は LPC 尺度(Least Preferred Coworker scale)を開発した。回答者に「最も一緒に働きにくい同僚」を評定させ、高 LPC 得点者は関係志向型、低 LPC 得点者は課題志向型に分類される。Fiedler はリーダーシップ・スタイルは固定的であり容易に変えられないと仮定した。

状況の好意性: 以下の三要因で決定される。

  1. リーダーと部下の関係(Leader-Member Relations): 部下からの信頼・好意の程度
  2. 課題構造(Task Structure): 業務の明確さ・定型化の程度
  3. 地位権力(Position Power): リーダーの公式的権限の強さ

Fiedler モデルの核心的主張は、課題志向型リーダーは状況が非常に好意的または非常に不利な場合に有効であり、関係志向型リーダーは中程度の好意性の状況で有効である、というものである。リーダーのスタイルを変えるのではなく、リーダーに合った状況を設計すべきだとする点が、他の条件適応理論と異なる特徴である。

ハーシー=ブランチャードの SL 理論

Paul Hersey と Kenneth H. Blanchard(1969)は、SL 理論(Situational Leadership Theory)を提唱した。この理論は、部下の「成熟度」(maturity、後にレディネスと改称)に応じてリーダーシップ・スタイルを柔軟に切り替えるべきだとする。

部下の成熟度は、能力(ability)と意欲(willingness)の二軸で四段階に区分される。

成熟度 能力 意欲 対応スタイル
M1(低) 低い 低い/不安定 教示型(Telling): 高指示・低支援
M2(やや低) 低い〜中程度 高い 説得型(Selling): 高指示・高支援
M3(やや高) 高い 変動する 参加型(Participating): 低指示・高支援
M4(高) 高い 高い 委任型(Delegating): 低指示・低支援

SL 理論の実務的含意は明快であり、管理者研修で広く普及した。ただし、理論の実証的基盤は相対的に弱く、成熟度の操作的定義やスタイルと成熟度の適合が成果に及ぼす効果について、一貫した実証的支持は得られていない。

パス・ゴール理論

Robert J. House(1971)が提唱したパス・ゴール理論(Path-Goal Theory)は、Section 2 で扱ったブルームの期待理論を理論的基盤とする。リーダーの役割は、部下が目標(ゴール)に至る道筋(パス)を明確にし、障害を除去し、道程での報酬を提供することであるとする。

House は四つのリーダーシップ行動を識別した。

  • 指示型(Directive): 業務内容・手順・期限を明示する
  • 支援型(Supportive): 部下の福利に関心を示し、友好的な雰囲気を醸成する
  • 参加型(Participative): 意思決定において部下の意見を求め、提案を考慮する
  • 達成志向型(Achievement-Oriented): 高い目標を設定し、部下の能力に対する期待を示す

有効なスタイルは、部下の特性(能力・経験・統制の所在)と環境要因(課題構造・公式的権限体系・作業集団)の二つの条件適応変数によって決まる。例えば、課題が曖昧で部下の経験が浅い場合には指示型が有効であり、課題が明確で部下の能力が高い場合には達成志向型が適合するとされる。

graph TD
    subgraph "条件適応変数"
        E1["部下の特性"]
        E2["環境要因"]
    end
    subgraph "リーダーシップ行動"
        L1["指示型"]
        L2["支援型"]
        L3["参加型"]
        L4["達成志向型"]
    end
    subgraph "成果"
        O1["部下の動機づけ"]
        O2["部下の満足"]
        O3["業績向上"]
    end
    E1 --> L1
    E1 --> L2
    E1 --> L3
    E1 --> L4
    E2 --> L1
    E2 --> L2
    E2 --> L3
    E2 --> L4
    L1 --> O1
    L2 --> O2
    L3 --> O1
    L4 --> O3

変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)

Key Concept: 変革型リーダーシップ(Transformational Leadership) ビジョンの提示、知的刺激、個別的配慮などを通じて、フォロワーの価値観・態度・動機づけを根本的に変容させ、期待以上の成果を引き出すリーダーシップ。James MacGregor Burns が概念を提唱し、Bernard M. Bass が理論的精緻化を行った。

バーンズの変革型・交流型リーダーシップ

政治学者 James MacGregor Burns(1978)は著書 Leadership において、リーダーシップを以下の二類型に区別した。

  • 交流型リーダーシップ(Transactional Leadership): リーダーとフォロワーの間の交換関係に基づく。報酬と服従の取引を通じてフォロワーの行動を導く。既存の枠組みの中で機能する。
  • 変革型リーダーシップ(Transforming Leadership): フォロワーの高次の欲求や道徳的価値観に訴えかけ、フォロワー自身を変容させる。リーダーとフォロワーが相互に高め合い、動機づけと道徳性の水準を引き上げる。

Burns は両者を連続体の両極に位置づけ、相互に排他的であると主張した。また、Burns のいう変革型リーダーシップには強い倫理的要素が含まれており、フォロワーの道徳的発達を促すものでなければ真の変革型とは呼べないとした。

バスの変革型リーダーシップ・モデル

Bernard M. Bass(1985)は Burns の概念を組織行動論の文脈で精緻化し、実証研究の基盤を整備した。Bass は Burns と異なり、変革型と交流型は排他的ではなく補完的であり、効果的なリーダーは両方を使い分けると主張した。

Bass は変革型リーダーシップを四つの構成要素(4つの I)で定義した。

構成要素 内容
理想化された影響力(Idealized Influence) 高い倫理基準を示し、ロールモデルとしてフォロワーの信頼と尊敬を獲得する
鼓舞的動機づけ(Inspirational Motivation) 魅力的なビジョンを提示し、高い期待を伝えることでフォロワーの意欲を喚起する
知的刺激(Intellectual Stimulation) 前提を問い直し、創造的思考を奨励し、新たな問題解決アプローチを促す
個別的配慮(Individualized Consideration) フォロワー一人ひとりの成長ニーズに注意を払い、メンターとして支援する

一方、交流型リーダーシップは「条件付き報酬」(Contingent Reward: 成果に対して報酬を約束する)と「例外による管理」(Management by Exception: 基準からの逸脱時にのみ介入する)で構成される。さらに Bass は、リーダーシップの不在である「自由放任型」(Laissez-Faire)を最も非効果的なスタイルとして位置づけた。

Bass とBruce J. Avolio が開発した MLQ(Multifactor Leadership Questionnaire)は、変革型・交流型・自由放任型リーダーシップを測定する標準的尺度として広く用いられている。メタ分析の結果、変革型リーダーシップはフォロワーの職務満足・組織コミットメント・業績と正の相関を持つことが繰り返し確認されている。


新しいリーダーシップの潮流

サーバント・リーダーシップ

Robert K. Greenleaf(1970)が提唱したサーバント・リーダーシップ(Servant Leadership)は、「リーダーはまず奉仕者(サーバント)である」という逆転の発想に立つ。リーダーの第一義的役割はフォロワーの成長・自律・福利を支援することであり、リーダーシップはその結果として自然に生じるとする。

Greenleaf は、サーバント・リーダーシップの最良のテストとして「奉仕を受けた人々がより健康に、より賢く、より自由に、より自律的になり、自らもサーバントとなる可能性が高まったか」を挙げた。傾聴・共感・癒やし・気づき・説得・概念化・先見力・執事役・人々の成長への関与・コミュニティの構築という十の特性が重視される。

オーセンティック・リーダーシップ

オーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership)は、リーダーの自己認識・自己規律・透明性・内面化された道徳観を中核とする概念である。Bill George(2003)やBruce J. Avolio と William L. Gardner(2005)らによって体系化された。

オーセンティック・リーダーは、自分自身の価値観・信念・強み・弱みを深く理解しており、外部の圧力に屈することなく、自らの内的基準に従って行動する。フォロワーとの関係において透明性を保ち、偏りのない情報処理を行う。企業の倫理的不祥事が相次いだ2000年代以降、特に注目を集めている概念である。

サーバント・リーダーシップとオーセンティック・リーダーシップはいずれも、変革型リーダーシップ以降の「倫理的・道徳的側面を重視するリーダーシップ研究」の系譜に位置づけられる。


まとめ

  • リーダーシップとは集団の目標達成に向けた影響力のプロセスであり、公式的権限に基づくマネジメントとは区別される
  • 特性論はリーダーの生得的資質を探求したが、普遍的特性の特定には至らなかった。ただし特性が促進要因であるとの知見は現代にも引き継がれている
  • 行動論はリーダーの行動を「課題志向」と「人間関係志向」の二次元で整理し、リーダーシップが学習可能であることを示した
  • 条件適応論は「唯一最善のスタイル」を否定し、状況とスタイルの適合を重視した。フィードラー・モデル、SL 理論、パス・ゴール理論がその代表である
  • 変革型リーダーシップは、ビジョン・知的刺激・個別配慮を通じてフォロワーを変容させるリーダーシップであり、実証的にも高い有効性が確認されている
  • サーバント・リーダーシップやオーセンティック・リーダーシップは、倫理的・道徳的側面を重視する現代的展開である
  • Section 5(集団意思決定と組織変革)では、リーダーシップが組織変革のプロセスにおいてどのように機能するかを検討する

用語集(Glossary)

用語 英語表記 定義
リーダーシップ Leadership 集団の目標達成に向けて他者に影響を与えるプロセス
特性論 Trait Approach リーダーの生得的資質・特性からリーダーシップを説明しようとするアプローチ
行動論 Behavioral Approach リーダーの行動パターンからリーダーシップの有効性を説明するアプローチ
配慮 Consideration 部下の感情・福利厚生に関心を示し、信頼関係を構築するリーダー行動
構造づくり Initiating Structure 目標達成に向けて役割を明確化し業務を体系化するリーダー行動
マネジリアル・グリッド Managerial Grid Blake と Mouton が開発した「人への関心」と「業績への関心」の二軸による9×9のリーダーシップ分類モデル
条件適応的リーダーシップ Contingency Leadership 状況変数とリーダーシップ・スタイルの適合を重視するアプローチ
LPC尺度 Least Preferred Coworker Scale フィードラーが開発した、リーダーのスタイル(課題志向/関係志向)を測定する尺度
SL理論 Situational Leadership Theory 部下の成熟度に応じてリーダーシップ・スタイルを切り替えるべきとする理論
パス・ゴール理論 Path-Goal Theory リーダーの役割を「部下が目標に至る道筋の明確化と障害除去」と捉える理論
変革型リーダーシップ Transformational Leadership ビジョン・知的刺激・個別配慮を通じてフォロワーを変容させるリーダーシップ
交流型リーダーシップ Transactional Leadership 報酬と服従の交換関係に基づくリーダーシップ
サーバント・リーダーシップ Servant Leadership リーダーの第一義的役割をフォロワーへの奉仕と捉えるリーダーシップ概念
オーセンティック・リーダーシップ Authentic Leadership 自己認識・透明性・内面化された道徳観を中核とするリーダーシップ概念

確認問題

Q1: 特性論・行動論・条件適応論のそれぞれが「効果的なリーダーシップ」をどのように捉えているか、その前提と限界を比較して説明せよ。

A1: 特性論はリーダーの生得的資質(知能・自信等)が効果的リーダーシップの源泉であると捉えるが、普遍的特性の特定に失敗し、状況の影響を軽視する限界がある。行動論はリーダーの行動パターン(課題志向と人間関係志向)に着目し、リーダーシップが学習可能であることを示したが、状況を超えて「唯一最善のスタイル」が存在するとの前提に無理があった。条件適応論は状況変数とスタイルの適合を重視し、「最善のスタイルは状況に依存する」とすることで先行理論の限界を克服したが、モデルが複雑化し実務適用の困難さや実証的検証の難しさが課題として残る。

Q2: 変革型リーダーシップと交流型リーダーシップについて、Burns と Bass の見解の相違点を説明せよ。

A2: Burns は変革型と交流型を連続体の両極に位置づけ、両者は相互排他的であると主張した。変革型はフォロワーの高次欲求・道徳的価値観に訴えかけるものであり、交流型の報酬と服従の交換関係とは本質的に異なるとした。これに対し Bass は、両者は排他的ではなく補完的であり、効果的なリーダーは状況に応じて両方を使い分けると主張した。また Burns が倫理的・道徳的発達を変革型の必須条件としたのに対し、Bass は組織成果への影響という実証的側面により重点を置いた。

Q3: パス・ゴール理論はモチベーション理論(期待理論)とどのように接続しているか。リーダーの四つの行動スタイルのうち一つを例に挙げて説明せよ。

A3: パス・ゴール理論は、ブルームの期待理論における「努力→成果の期待(E)」「成果→報酬の道具性(I)」「報酬の誘意性(V)」をリーダーが高めることでフォロワーの動機づけを促進するとする。例えば指示型リーダーシップは、課題が曖昧で部下が何をすべきか不明確な状況において、業務手順・期待される成果・評価基準を明示することで「努力すれば成果が得られる」という期待(E)を高め、フォロワーの動機づけと満足を向上させる。

Q4: サーバント・リーダーシップが従来のリーダーシップ概念とどのような点で異なるか、Greenleaf の主張を踏まえて論じよ。

A4: 従来のリーダーシップ概念は、リーダーがまず目標・ビジョンを持ち、それを達成するためにフォロワーに影響を与えるという方向性を前提とする。サーバント・リーダーシップは、この因果関係を逆転させ、リーダーはまず奉仕者であるべきとする。Greenleaf は「まず奉仕したいという自然な感情」が起点であり、その結果としてリーダーシップが発現すると主張した。有効性の判断基準も組織成果ではなく、フォロワーが「より健康に、より賢く、より自由に、より自律的になったか」に置かれる点で、従来の成果志向的なリーダーシップ研究と根本的に異なる。