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Module 2-3 - Section 2: 消費者行動論

セクション情報

項目 内容
モジュール Module 2-3: マーケティング
前提セクション Section 1(マーケティングの基本概念とSTP)
想定学習時間 2.5時間

導入

Section 1で概観したR-STP-MM-I-Cのマーケティング・マネジメント・プロセスにおいて、STPを効果的に実行するためには、標的市場の消費者がどのように情報を処理し、何を基準に選択を行い、いかなる心理的メカニズムで態度を形成・変容させるのかを理解する必要がある。消費者行動論(Consumer Behavior)は、この問いに対して心理学・社会学・経済学等の知見を統合しながら体系的な回答を与える研究領域である。

本セクションでは、まず消費者行動研究の全体的な位置づけを確認した上で、関与度(involvement)の概念、購買意思決定プロセスの5段階モデル、態度形成・変容の理論(多属性態度モデル、精緻化見込みモデル)、そして準拠集団と口コミの影響を順に検討する。これらの理論枠組みは、Section 3以降で扱うマーケティング・ミックス(4P)の設計や、Section 4のブランド戦略・顧客関係管理に直結する基盤知識である。


消費者行動研究の位置づけ

消費者行動とは、製品やサービスの探索・選択・購買・使用・廃棄に至るまでの一連の意思決定と行動を指す。米国では1969年に消費者行動研究学会(Association for Consumer Research: ACR)が設立され、1974年には専門誌 Journal of Consumer Research が創刊されたことで、学術領域として急速に発展した。

Key Concept: 消費者行動(Consumer Behavior) 個人または集団が、ニーズや欲求を充足するために製品・サービスを探索・選択・購買・使用・廃棄する過程における意思決定と行動の総体。マーケティング戦略の基盤となる分析対象である。

消費者行動研究がマーケティングにおいて重要視される理由は明確である。セグメンテーション変数の設定、ターゲット顧客の理解、ポジショニングの策定(→ Section 1参照)はいずれも、消費者が「なぜ」「どのように」購買意思決定を行うかについての理解を前提とする。消費者行動の理論的枠組みを欠いたマーケティング戦略は、経験則や直感に依存する不安定なものとなる。

消費者行動に影響を与える要因は多層的であり、以下のように整理される。

要因カテゴリー 具体例
文化的要因 文化、サブカルチャー、社会階層
社会的要因 準拠集団、家族、役割と地位
個人的要因 年齢、職業、ライフスタイル、パーソナリティ
心理的要因 動機づけ、知覚、学習、態度

本セクションでは、特に心理的要因と社会的要因(準拠集団)に焦点を当てて理論を展開する。


関与度

関与度の概念

関与度(involvement)とは、特定の製品カテゴリーや購買状況に対して消費者が感じる個人的な重要性や関心の程度を指す。この概念は、消費者行動のパターンを理解し予測する上で中心的な役割を果たす。

Key Concept: 関与度(Involvement) 特定の対象(製品、購買状況、広告メッセージ等)に対して消費者が知覚する個人的な関連性・重要性の度合い。関与度の高低によって情報処理の深さや意思決定のプロセスが質的に異なる。

高関与と低関与の対比

関与度の高低は、消費者の情報処理行動と意思決定プロセスに質的な差異をもたらす。

次元 高関与(High Involvement) 低関与(Low Involvement)
対象例 住宅、自動車、保険、高額家電 日用消費財、飲料、文房具
情報探索 能動的・広範な探索 受動的・限定的な探索
代替案評価 多数の属性を比較検討 少数の属性または習慣的選択
意思決定タイプ 拡大的問題解決 限定的・日常的問題解決
ブランドスイッチ 困難(高い忠誠度) 容易(低いスイッチングコスト)
知覚リスク 高い 低い

関与度に影響を与える要因としては、(1) 製品の価格、(2) 購買結果がもたらすリスクの大きさ、(3) 製品と自己概念との関連性、(4) 社会的可視性(他者に見られるかどうか)、(5) 快楽的価値(感覚的・感情的な満足)が挙げられる。

マーケティング戦略への示唆

高関与製品のマーケティングでは、消費者が能動的に情報を探索するため、製品の機能的優位性や比較情報の提供が効果的である。一方、低関与製品では、消費者は積極的に情報を処理しないため、ブランドの露出頻度を高め、視覚的なインパクトやパッケージデザインによる注意喚起、店頭での購買時点プロモーション(POP)が重要となる。


購買意思決定プロセス

5段階モデル

フィリップ・コトラー(Philip Kotler)が体系化した購買意思決定プロセスの5段階モデルは、消費者行動研究の中核的枠組みである。消費者は以下の5段階を経て購買に至る。

Key Concept: 購買意思決定プロセス(Consumer Decision-Making Process) 消費者が製品・サービスの購買に際して経る認知的・行動的プロセスの全体構造。問題認知→情報探索→代替案評価→購買決定→購買後評価の5段階で構成される。すべての購買が必ずしも全段階を経るわけではなく、関与度や経験に応じて段階が省略されることもある。

graph LR
    A["問題認知<br/>Problem Recognition"] --> B["情報探索<br/>Information Search"]
    B --> C["代替案評価<br/>Alternative Evaluation"]
    C --> D["購買決定<br/>Purchase Decision"]
    D --> E["購買後評価<br/>Post-Purchase Evaluation"]
    E -->|"不満足・新たなニーズ"| A

各段階の詳細

第1段階: 問題認知(Problem Recognition)

消費者が現状(現在の状態)と理想(望ましい状態)との間にギャップを知覚することで購買プロセスが始動する。このギャップは内的刺激(空腹、喉の渇き等の生理的ニーズ)または外的刺激(広告、他者の所有物の目撃、口コミ等)によって喚起される。

第2段階: 情報探索(Information Search)

問題を認知した消費者は、解決策となりうる製品・サービスに関する情報を収集する。情報源は以下の4種に分類される。

情報源 具体例
個人的情報源 家族、友人、知人、同僚
商業的情報源 広告、販売員、パッケージ、Webサイト
公共的情報源 マスメディア、消費者団体、口コミサイト
経験的情報源 製品の試用、店頭での実物確認

消費者が認知しているブランドの集合(知名集合)から、実際に購買候補として検討する集合(考慮集合/想起集合: evoked set)が形成される。マーケティング上は、自社ブランドを消費者の考慮集合に含めさせることが第一の目標となる。

第3段階: 代替案評価(Alternative Evaluation)

考慮集合内のブランドを、消費者が重視する評価基準(属性)に基づいて比較検討する段階である。評価基準は製品カテゴリーによって異なり、例えばスマートフォンであればカメラ性能・バッテリー持続時間・価格・デザインなどが主要な属性となる。この段階の理論的精緻化として後述する多属性態度モデルが重要な役割を果たす。

第4段階: 購買決定(Purchase Decision)

代替案評価に基づいて購買意図が形成されるが、意図がそのまま購買行動に直結するとは限らない。購買意図と購買行動の間には、(1) 他者の態度(周囲の人々からの反対意見等)、(2) 予期せぬ状況要因(急な出費、価格変動等)が介在しうる。

第5段階: 購買後評価(Post-Purchase Evaluation)

購買後、消費者は製品のパフォーマンスと事前の期待水準を比較する。期待を上回れば満足、下回れば不満足が生じる。不満足の場合、消費者は返品・苦情・ネガティブな口コミの発信・ブランドスイッチといった行動をとる。また、高関与の購買後にしばしば生じる認知的不協和(cognitive dissonance)――自分の選択が正しかったか疑う心理状態――への対処も、マーケティング上重要である。企業はアフターサービスや購買後コミュニケーションを通じて、この不協和を低減させることが望ましい。

ハワード=シェス・モデル

ジョン・ハワード(John A. Howard)とジャグディッシュ・シェス(Jagdish N. Sheth)が1969年に提唱したハワード=シェス・モデル(Howard-Sheth Model)は、消費者の購買行動をより包括的に説明する情報処理モデルである。このモデルは刺激変数(入力)→知覚構成概念・学習構成概念(処理)→反応変数(出力)という構造を持ち、消費者が経験を重ねることで意思決定パターンが変化する過程を3段階で示す。

  1. 拡大的問題解決(Extensive Problem Solving): 製品カテゴリーに関する知識が乏しく、広範な情報探索と慎重な評価を行う段階
  2. 限定的問題解決(Limited Problem Solving): ある程度の知識を有し、既知の基準に基づいて限定的な比較を行う段階
  3. 日常的反応行動(Routinized Response Behavior): 十分な経験に基づいて、ほぼ自動的に特定ブランドを選択する段階

このモデルはコトラーの5段階モデルを補完するものであり、消費者の学習と経験蓄積によって意思決定の複雑性が変化するダイナミクスを捉えている点に特徴がある。


態度形成と変容

消費者が製品やブランドに対してもつ態度(attitude)は、購買行動の重要な予測因子である。態度とは、ある対象に対する持続的な好意的・非好意的評価、感情的反応、行動的傾向の総体である。ここでは、態度の構造を定量的に把握する多属性態度モデルと、態度変容のプロセスを説明する精緻化見込みモデルを検討する。

多属性態度モデル

マーティン・フィッシュバイン(Martin Fishbein)が提唱した多属性態度モデル(Multi-Attribute Attitude Model)は、消費者がある製品・ブランドに対する態度を複数の属性に対する評価の加重和として形成すると仮定する。

モデルの基本式は以下のとおりである。

$$A_o = \sum_{i=1}^{n} b_i \cdot e_i$$

  • $A_o$: 対象oに対する全体的態度
  • $b_i$: 対象oが属性$i$を有しているという信念(belief)の強さ
  • $e_i$: 属性$i$に対する評価(evaluation)
  • $n$: 考慮される属性の数

例えば、消費者がスマートフォンを評価する場合、「カメラ性能」「バッテリー持続時間」「価格」「デザイン」等の属性ごとに、各ブランドがその属性を備えている程度(信念)と、その属性の重要度(評価)を掛け合わせ、合算することで全体的な態度スコアが算出される。

このモデルのマーケティング上の含意は以下のとおりである。

  1. 信念の変容: 広告により自社製品が特定属性で優れているという信念を強化する
  2. 評価の変容: 自社が優位な属性の重要性を消費者に訴求する
  3. 新属性の追加: 競合が対応していない新たな評価属性を提案する

精緻化見込みモデル(ELM)

リチャード・ペティ(Richard E. Petty)とジョン・カシオッポ(John T. Cacioppo)が1986年に体系化した精緻化見込みモデル(Elaboration Likelihood Model: ELM)は、説得的コミュニケーションが態度変容を引き起こすメカニズムを二重過程として説明する。

Key Concept: 精緻化見込みモデル(Elaboration Likelihood Model: ELM) 説得的メッセージに対する態度変容が、中心的ルート(論理的・分析的処理)と周辺的ルート(ヒューリスティック的処理)の2経路のいずれかを通じて生じるとする理論。消費者の動機づけと処理能力の高低によってどちらのルートが優勢となるかが決まる。

graph TD
    A["説得的メッセージ"] --> B{"動機づけ・処理能力"}
    B -->|"高い"| C["中心的ルート<br/>Central Route"]
    B -->|"低い"| D["周辺的ルート<br/>Peripheral Route"]
    C --> E["論拠の質を精査"]
    D --> F["周辺的手がかりに依拠"]
    E -->|"論拠が強い"| G["持続的な態度変容"]
    E -->|"論拠が弱い"| H["態度変容なし/逆効果"]
    F --> I["一時的な態度変容"]

中心的ルート(Central Route): 消費者がメッセージ内容に高い関心を持ち、かつ情報を処理する認知的能力を有している場合に作動する。消費者は論拠の質を慎重に吟味し、強い論拠であれば持続的かつ行動予測力の高い態度変容が生じる。高関与製品(自動車、住宅ローン等)の広告戦略では、この中心的ルートへの訴求が有効であり、具体的な性能データや比較情報の提示が重要となる。

周辺的ルート(Peripheral Route): 動機づけや処理能力が低い場合、消費者はメッセージの論拠自体ではなく、周辺的手がかり(peripheral cues)に基づいて態度を形成する。周辺的手がかりの典型例としては、情報源の魅力(有名人の起用)、情報源の専門性・信頼性、メッセージの量(多くの論拠があるという印象)、他者の反応(「みんなが使っている」)などがある。周辺的ルートを通じた態度変容は一時的であり、反論にも脆弱である。低関与製品の広告やテレビCMでは、このルートを意識した訴求(タレント起用、キャッチーな音楽、繰り返しの露出)が主流となる。

ELMの実務上の重要性は、製品の関与度や消費者の情報処理の文脈に応じてコミュニケーション戦略を使い分ける理論的根拠を提供する点にある。


準拠集団と口コミの影響

準拠集団の概念と類型

消費者の態度形成や購買行動は、個人内部の心理的プロセスのみならず、社会的文脈からも強く影響を受ける。その中心的概念が準拠集団(reference group)である。

Key Concept: 準拠集団(Reference Group) 個人が自己の態度・価値観・行動の評価基準として参照する集団。消費者の購買意思決定に情報的影響、功利的影響、価値表出的影響の3つの経路で作用する。

準拠集団は以下のように分類される。

分類基準 類型
接触の直接性 一次集団(Primary Group) 家族、親友、同僚
二次集団(Secondary Group) 職業団体、同窓会、宗教団体
所属の有無 所属集団(Membership Group) 実際に所属している集団
願望集団(Aspirational Group) 所属を望む集団(憧れの集団)
回避集団(Dissociative Group) 所属を避けたい集団

準拠集団の影響メカニズム

準拠集団が消費者行動に影響を与える経路は3つに分類される(パーク&レシック (C. Whan Park & V. Parker Lessig) の枠組み)。

  1. 情報的影響(Informational Influence): 準拠集団のメンバーが持つ情報や経験を参考にする。例えば、IT企業の同僚が推奨するソフトウェアを導入する場合がこれに該当する。
  2. 功利的影響(Utilitarian Influence): 集団の期待や規範に従うことで、社会的報酬を得たり社会的制裁を回避したりする。例えば、職場のドレスコードに合わせた衣服選択がこれにあたる。
  3. 価値表出的影響(Value-Expressive Influence): 準拠集団と同一化することで自己概念を強化・表現する。例えば、尊敬するアスリートと同じブランドのスポーツ用品を購入する行動がこれに該当する。

準拠集団の影響力は、製品の社会的可視性が高いほど(他者に使用が見えるほど)、また消費者が製品カテゴリーに不慣れであるほど強まる傾向がある。

口コミの役割

口コミ(Word of Mouth: WOM)は、準拠集団を通じた情報的影響の主要な経路であり、消費者行動研究において一貫してその影響力の大きさが確認されてきた。

口コミが企業発の商業的情報源と比較して強い影響力を持つ理由は以下のとおりである。

  • 信頼性: 発信者が商業的利害を持たないため、情報の客観性が高いと知覚される
  • 関連性: 発信者が受信者と類似した立場にあるため、情報が自分の状況に適用可能であると判断されやすい
  • 双方向性: 質問や確認が可能であり、個別のニーズに応じた情報が得られる

近年では、インターネット上の口コミ(electronic Word of Mouth: eWOM)がその影響範囲を飛躍的に拡大させている。SNS上のレビュー、ブログ記事、動画レビュー、比較サイトの評価等は、一次集団の範囲を超えて広範な消費者に到達する。オピニオンリーダー(opinion leader)やインフルエンサー(influencer)は、特定の製品カテゴリーにおいて情報の発信力と影響力を持つ個人であり、企業がこれらの人物との関係構築を図るインフルエンサー・マーケティングは、準拠集団の影響メカニズムを戦略的に活用したものである。


まとめ

  • 消費者行動論は、消費者の意思決定と行動のメカニズムを解明し、マーケティング戦略の理論的基盤を提供する研究領域である
  • 関与度は消費者の情報処理パターンと意思決定プロセスの質的な差異を規定する中心的概念であり、高関与と低関与で最適なマーケティング・コミュニケーション戦略が異なる
  • 購買意思決定プロセスは、問題認知→情報探索→代替案評価→購買決定→購買後評価の5段階で構成され、関与度や経験によって段階の省略・短縮が生じる
  • 多属性態度モデルは、消費者の態度を属性ごとの信念と評価の加重和として定量的に捉え、態度変容の戦略的介入点を特定する分析枠組みである
  • ELMは、関与度と処理能力に応じて中心的ルートと周辺的ルートの2経路で態度変容が生じることを示し、コミュニケーション戦略の設計指針を提供する
  • 準拠集団と口コミは、消費者行動に対する社会的影響の主要経路であり、特にeWOMの拡大により、その戦略的重要性は増大している
  • 次のSection 3(マーケティング・ミックス(4P))では、本セクションで理解した消費者行動の原理を前提として、製品・価格・流通・プロモーションの4要素をいかに設計するかを検討する

用語集(Glossary)

用語 英語表記 定義
消費者行動 Consumer Behavior 製品・サービスの探索・選択・購買・使用・廃棄に関する消費者の意思決定と行動の総体
関与度 Involvement 特定の対象に対して消費者が知覚する個人的関連性・重要性の度合い
購買意思決定プロセス Consumer Decision-Making Process 問題認知→情報探索→代替案評価→購買決定→購買後評価の5段階からなる購買行動の認知的プロセス
考慮集合 Evoked Set 消費者が購買候補として実際に検討するブランドの集合
認知的不協和 Cognitive Dissonance 購買後に自分の選択が正しかったか疑う心理的緊張状態
多属性態度モデル Multi-Attribute Attitude Model 複数の製品属性に対する信念と評価の加重和として態度を算出するモデル
精緻化見込みモデル Elaboration Likelihood Model (ELM) 態度変容が中心的ルートと周辺的ルートの2経路のいずれかで生じるとする理論
中心的ルート Central Route 論拠の質を精査する分析的処理経路。高関与時に優勢
周辺的ルート Peripheral Route 周辺的手がかり(情報源の魅力等)に基づく簡便的処理経路。低関与時に優勢
準拠集団 Reference Group 個人が態度・行動の評価基準として参照する集団
口コミ Word of Mouth (WOM) 消費者間の非商業的な製品・サービス情報の伝達
オピニオンリーダー Opinion Leader 特定領域で情報発信力と影響力を持ち、他者の態度・行動に影響を与える個人

確認問題

Q1: 高関与製品と低関与製品では、消費者の情報処理と意思決定のパターンにどのような違いが生じるか。それぞれに適したマーケティング・コミュニケーション戦略の方向性と合わせて説明せよ。

A1: 高関与製品(住宅、自動車等)では、消費者は能動的かつ広範に情報を探索し、多数の属性を比較検討する拡大的問題解決を行う。この場合、製品の機能的優位性を具体的データで示す情報提供型のコミュニケーションが有効である(ELMの中心的ルートへの訴求)。一方、低関与製品(日用品等)では、消費者は受動的な情報処理にとどまり、習慣的選択を行う。この場合、ブランドの露出頻度を高める反復的広告、視覚的インパクト、タレント起用等の周辺的手がかりを活用したコミュニケーションが適する(周辺的ルートへの訴求)。

Q2: 購買意思決定プロセスの5段階のうち、「購買後評価」の段階がマーケティング戦略上重要である理由を、認知的不協和の概念を用いて説明せよ。

A2: 購買後評価の段階では、消費者は製品パフォーマンスと事前期待を比較し、満足・不満足の判断を行う。高関与の購買後にはしばしば認知的不協和が生じ、消費者は自分の選択が最善であったか不安を抱く。この不協和が解消されないと、ネガティブな口コミの発信やブランドスイッチにつながる。企業はアフターサービスの充実、購買後のフォローアップ・コミュニケーション(感謝状、使い方ガイド等)、ユーザーコミュニティの形成等を通じて不協和を低減し、リピート購買やポジティブな口コミを促進することが重要である。

Q3: 精緻化見込みモデル(ELM)における中心的ルートと周辺的ルートの違いを、それぞれのルートが優勢となる条件、態度変容の特性と合わせて説明せよ。

A3: 中心的ルートは、消費者がメッセージ内容に高い動機づけと処理能力を有する場合に優勢となる。消費者は論拠の質を慎重に精査し、論拠が強ければ持続的で行動予測力の高い態度変容が生じるが、論拠が弱ければ変容は生じない(逆効果となることもある)。周辺的ルートは、動機づけまたは処理能力が低い場合に優勢となり、消費者は情報源の魅力・信頼性、メッセージの量、他者の反応等の周辺的手がかりに基づいて態度を形成する。このルートによる態度変容は一時的であり、反論に対して脆弱である。

Q4: 準拠集団が消費者行動に影響を及ぼす3つの経路を説明し、それぞれについて具体例を挙げよ。

A4: 準拠集団の影響経路は以下の3つである。(1) 情報的影響: 集団メンバーの知識・経験を情報源として活用する。例えば、カメラ愛好者のコミュニティで推奨されたレンズを購入する場合。(2) 功利的影響: 集団の規範や期待に従うことで社会的承認を得たり制裁を回避したりする。例えば、取引先との会食時にフォーマルな服装を選択する場合。(3) 価値表出的影響: 集団への同一化を通じて自己概念を表現・強化する。例えば、憧れのミュージシャンと同じブランドの楽器や衣服を購入する場合。製品の社会的可視性が高いほど、また消費者がその製品カテゴリーに不慣れであるほど、これらの影響は強まる傾向がある。