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Module 2-3 - Section 3: マーケティング・ミックス(4P)

セクション情報

項目 内容
モジュール Module 2-3: マーケティング
前提セクション Section 1(マーケティングの基本概念とSTP)
想定学習時間 3時間

導入

Section 1で示したR-STP-MM-I-Cのマーケティング・マネジメント・プロセスにおいて、STPによって標的市場とポジショニングが決定された後に展開されるのがマーケティング・ミックス(MM)である。マーケティング・ミックスとは、企業が標的市場において望ましい反応を引き出すために組み合わせるマーケティング諸手段の総体を指す。

本セクションでは、E・ジェローム・マッカーシー(E. Jerome McCarthy)が1960年に体系化した4P——Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)——の各要素について、理論的枠組みと実務的論点を検討する。4Pは半世紀以上にわたりマーケティング戦略立案の基本的フレームワークとして用いられてきたものであり、STPで定めた戦略的方向性を具体的な施策に落とし込む段階に位置づけられる。


マーケティング・ミックスの概念

Key Concept: マーケティング・ミックス(Marketing Mix / 4P) マーケターが標的市場において期待する反応を引き出すために用いるマーケティング・ツールの組み合わせ。マッカーシーが提唱したProduct・Price・Place・Promotionの4Pが代表的な枠組みである。

マッカーシーは、ニール・ボーデン(Neil Borden)が1953年に提示した12要素からなるマーケティング・ミックスの概念を、4つのPに整理・体系化した。この4Pモデルは、フィリップ・コトラー(Philip Kotler)の教科書を通じて広く普及し、マーケティング戦略の策定における標準的枠組みとなった。

4Pと4Cの対応関係

ロバート・ラウターボーン(Robert Lauterborn, 1990)は、4Pが売り手視点のフレームワークであることを批判し、買い手視点の4Cを提示した。

売り手視点(4P) 買い手視点(4C) 視点の転換
Product(製品) Customer Value(顧客価値) 何を売るか → 顧客にとっての価値は何か
Price(価格) Customer Cost(顧客コスト) いくらで売るか → 顧客が負担する総コストは何か
Place(流通) Convenience(利便性) どこで売るか → 顧客にとって入手しやすいか
Promotion(プロモーション) Communication(コミュニケーション) どう伝えるか → 顧客との双方向の対話か

4Cは4Pを否定するものではなく、同じ意思決定を顧客側から捉え直したものである。実務においては両者を相互補完的に活用することが有効とされる。


Product(製品戦略)

製品戦略は4Pの中核を成す要素である。ここでいう「製品」とは、有形財のみならず、サービス、アイデア、経験、人物、場所など、市場で交換の対象となるあらゆる提供物を包含する。

製品の3層モデル

コトラーは製品の構造を3つの層に分けて捉えるプロダクト3層モデル(Three Levels of Product)を提示した。このモデルは、製品の本質的価値を理解し、差別化戦略を検討する際の基盤となる。

名称 内容 例(スマートフォン)
第1層 中核便益(Core Benefit) 顧客が本質的に購入する便益 コミュニケーション・情報アクセス
第2層 実体製品(Actual Product) 品質水準・特徴・デザイン・ブランド名・パッケージング 画面サイズ・カメラ性能・Apple/Samsung
第3層 拡大製品(Augmented Product) 設置・アフターサービス・保証・配送・信用供与 AppleCare・下取りプログラム・無料配送

競争が激化した市場では、中核便益による差別化が困難になるため、実体製品や拡大製品のレベルでの差別化が重要となる。

製品ラインとプロダクト・ミックス

企業は通常、単一の製品ではなく複数の製品を組み合わせて市場に提供する。この全体構成を理解する概念として、製品ラインとプロダクト・ミックスがある。

  • 製品ライン(Product Line): 機能・顧客層・価格帯など何らかの共通性を持つ製品群。例えばトヨタ自動車におけるセダンライン(カローラ・カムリ・クラウン等)。
  • プロダクト・ミックス(Product Mix): 企業が提供する全製品ラインの総体。その特性は以下の4次元で記述される。
  • 幅(Width): 製品ラインの数
  • 深さ(Depth): 各製品ライン内のアイテム数
  • 長さ(Length): 全アイテムの総数
  • 整合性(Consistency): 各製品ライン間の関連度

製品ライフサイクル(PLC)

Key Concept: 製品ライフサイクル(Product Life Cycle: PLC) 製品が市場に導入されてから撤退するまでの売上高と利益の推移を、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4段階に区分したモデル。各段階に応じて最適なマーケティング戦略が異なる。

graph LR
    A["導入期<br/>Introduction"] --> B["成長期<br/>Growth"]
    B --> C["成熟期<br/>Maturity"]
    C --> D["衰退期<br/>Decline"]

    style A fill:#e8f4fd,stroke:#333
    style B fill:#d4edda,stroke:#333
    style C fill:#fff3cd,stroke:#333
    style D fill:#f8d7da,stroke:#333

各段階の特徴とマーケティング戦略は以下の通りである。

段階 売上・利益 競争状況 主要戦略目標 主なマーケティング施策
導入期 売上低水準・利益はマイナスまたは僅少 競合は少数 認知獲得・試用促進 大規模な広告投資、無料サンプル・試用機会の提供
成長期 売上急増・利益拡大 参入企業増加 市場シェア最大化 製品改良・ライン拡張、流通チャネル拡大
成熟期 売上安定・利益横ばいから減少 競合多数・価格競争 利益維持・シェア防衛 製品差別化、市場修正(新用途・新セグメント開拓)
衰退期 売上減少・利益縮小 競合撤退開始 コスト削減・収穫 製品ライン縮小、撤退判断、残存者利益の獲得

PLCモデルの適用にあたっては留意点がある。すべての製品が典型的なS字カーブをたどるわけではなく、流行型(急激な成長と衰退)、サイクル・リサイクル型(成熟期後に再成長)、スキャロップ型(新用途発見による複数の成長波)など多様なパターンが存在する。PLCは予測ツールというより、現在の段階に応じた戦略選択の指針として活用すべきものである。

新製品開発プロセス

新製品開発は企業の持続的成長に不可欠であるが、高い失敗率を伴う(一般に新製品の成功率は10〜20%とされる)。コトラーは新製品開発を以下の段階に整理した。

  1. アイデア創出(Idea Generation): 社内外からの広範なアイデア収集
  2. アイデアのスクリーニング(Screening): 実現可能性と市場性による絞り込み
  3. コンセプト開発とテスト(Concept Development & Testing): 製品コンセプトの具体化と消費者による評価
  4. マーケティング戦略の立案(Marketing Strategy Development): STPとマーケティング・ミックスの設計
  5. 事業性分析(Business Analysis): 売上・コスト・利益の予測
  6. 製品開発(Product Development): 試作品の製造
  7. テスト・マーケティング(Test Marketing): 限定市場での試験販売
  8. 商業化(Commercialization): 本格的な市場投入

Price(価格戦略)

価格は4Pの中で唯一、直接的に収益を生む要素である。他の3Pがコストを発生させるのに対し、価格設定は利益の大きさを直接左右する。同時に、価格は変更が比較的容易であるという柔軟性を持つが、誤った価格設定は売上の喪失やブランドイメージの毀損に直結する。

価格設定の3つのアプローチ

価格設定の基本的アプローチは、何を基準とするかによって3つに大別される。

1. コストベース価格設定(Cost-Based Pricing)

製品の原価に一定の利幅(マークアップ)を加算して価格を決定する方法である。計算が容易で価格の正当化が容易であるが、需要や競争状況を反映しないという限界がある。

  • コストプラス法: 価格 = 総コスト ÷ 予想販売数量 + 目標利益
  • 損益分岐点分析: 固定費を回収するために必要な販売数量を算定

2. 競争ベース価格設定(Competition-Based Pricing)

競合他社の価格を参照して自社価格を設定する方法である。市場価格に準じる実勢価格法(Going-Rate Pricing)と、入札を通じて価格を決定する競争入札法がある。コモディティ化した市場で多用される。

3. 価値ベース価格設定(Value-Based Pricing)

顧客が製品に認める知覚価値(Perceived Value)を基準に価格を設定する方法である。顧客調査を通じて支払意思額(WTP: Willingness to Pay)を把握し、それに基づいて価格を決定する。コストや競争ではなく顧客価値を起点とするため、マーケティング・コンセプト(顧客志向)に最も整合的なアプローチとされる。

新製品の価格戦略

新製品を市場に投入する際の価格戦略として、対照的な2つのアプローチがある。

Key Concept: スキミング価格戦略(Skimming Pricing) 新製品を高価格で市場に導入し、価格感応度の低い層(イノベーターやアーリーアダプター)から先行的に利益を回収する戦略。初期投資の早期回収を目指す。

Key Concept: 浸透価格戦略(Penetration Pricing) 新製品を低価格で市場に投入し、短期間で大きな市場シェアを獲得する戦略。規模の経済によるコスト優位と、競合参入の抑止を狙う。

比較項目 スキミング価格 浸透価格
初期価格 高い 低い
目標 利益の早期回収 市場シェアの早期獲得
適する条件 品質・イメージが高価格を支持、少量生産でもコスト優位あり 価格弾力性が高い市場、規模の経済が大きい
競合への影響 高利益率が参入を誘引 低価格が参入を抑止
価格推移 段階的に引き下げ 維持または更に引き下げ
代表例 Apple iPhone(発売時)、高級家電 日用消費財の新ブランド、携帯通信サービス

実証研究(Spann, Fischer & Tellis, 2015)によれば、実際の市場では純粋なスキミングや浸透よりも、市場価格に近い水準で導入するケースが約60%を占め、スキミング・浸透はそれぞれ約20%であることが報告されている。

ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)とは、需要の変動・競合状況・在庫水準・購買タイミング等に応じてリアルタイムに価格を変動させる手法である。航空券・ホテル宿泊料金では古くから導入されていたが、Eコマースの発展によりあらゆる業種で適用が拡大している。アルゴリズムによる自動価格調整が一般化し、Amazonは1日に数百万回の価格変更を行っているとされる。消費者からの公正性への懸念(同一商品に対する価格差別への反発)が課題となる。


Place(流通チャネル戦略)

Place(流通)は、製品を生産者から最終消費者に届けるまでの経路と仕組みに関する戦略である。チャネル設計は一度構築すると変更が困難であり、4Pの中でも長期的なコミットメントを要する意思決定である。

チャネルの段階と構造

流通チャネルは、生産者と消費者の間に介在する中間業者(卸売業者・小売業者)の数によって段階が区分される。

  • 0段階チャネル(直接流通): 生産者 → 消費者(自社ECサイト・直営店舗)
  • 1段階チャネル: 生産者 → 小売業者 → 消費者
  • 2段階チャネル: 生産者 → 卸売業者 → 小売業者 → 消費者
  • 3段階チャネル: 生産者 → 代理店 → 卸売業者 → 小売業者 → 消費者

チャネルの段階数が増えるほど市場カバレッジが拡大する一方、メーカーの統制力は低下し、中間マージンによってコストが増加する。

チャネル政策(チャネルの幅)

製品特性とブランド戦略に応じて、流通チャネルの幅(取引先の選別度合い)を決定する。

チャネル政策 内容 適する製品 メリット デメリット
開放的流通(Intensive Distribution) できるだけ多くの販売拠点に配荷 最寄品(日用雑貨・飲料・菓子) 市場カバレッジ最大化 チャネル統制困難、ブランドイメージ管理が難しい
選択的流通(Selective Distribution) 一定基準を満たす販売拠点を選別 買回品(家電・衣料) 適度な統制と市場カバレッジの両立 基準設定・管理コスト
排他的流通(Exclusive Distribution) 特定地域で限定された販売拠点に独占権付与 専門品(高級ブランド・自動車) ブランドイメージ維持、高い統制力 市場カバレッジ限定的

チャネル・コンフリクト

チャネルを構成する各主体(メーカー・卸売業者・小売業者)の間で、利害の不一致から生じる対立をチャネル・コンフリクト(Channel Conflict)と呼ぶ。

  • 垂直的コンフリクト: チャネルの異なる段階間の対立(例: メーカーが直販サイトを開設し、小売業者の売上を侵食)
  • 水平的コンフリクト: 同一段階のチャネルメンバー間の対立(例: 同一ブランドを扱う小売店同士の価格競争)
  • マルチチャネル・コンフリクト: オンラインチャネルとオフラインチャネル間の対立

コンフリクトの解消策としては、チャネル間の役割分担の明確化、価格統一のルール策定、テリトリー制の導入、チャネルリーダーによる統制力の行使などがある。


Promotion(プロモーション戦略)

プロモーションは、製品の存在と価値を標的市場に伝達し、購買行動を喚起するためのコミュニケーション活動全般を指す。

プロモーション・ミックス

Key Concept: プロモーション・ミックス(Promotion Mix) 広告・販売促進・パブリック・リレーションズ(PR)・人的販売・ダイレクト・マーケティングの5つの主要コミュニケーション手段の組み合わせ。製品特性・市場特性・PLC段階に応じて最適な配分が異なる。

手段 内容 特徴 適する場面
広告(Advertising) 有料メディアを通じた非人的コミュニケーション 到達範囲が広い、単位コストが低い、一方向的 ブランド認知の構築、大量市場への訴求
販売促進(Sales Promotion) 短期的な購買インセンティブの提供 即時の行動喚起、効果が短期的 試用促進、在庫処分、競合対抗
パブリック・リレーションズ(PR) 報道・記事による情報発信 信頼性が高い、コスト効率が良い、統制が困難 企業・ブランドの信頼性構築
人的販売(Personal Selling) 販売員による対面での説得的コミュニケーション 双方向、顧客ニーズへの即応、高コスト 高額製品、BtoB取引、複雑な製品
ダイレクト・マーケティング(Direct Marketing) 個々の消費者への直接的コミュニケーション 個別対応可能、反応測定が容易 CRM、リピート促進

プッシュ戦略とプル戦略

プロモーション・ミックスの設計において、チャネルに対する基本的なアプローチとして2つの戦略がある。

graph LR
    subgraph "プッシュ戦略"
        M1["メーカー"] -->|"人的販売<br/>販売促進"| W1["卸売・小売"]
        W1 -->|"推奨販売"| C1["消費者"]
    end
    subgraph "プル戦略"
        M2["メーカー"] -->|"広告<br/>PR"| C2["消費者"]
        C2 -->|"指名購買"| W2["卸売・小売"]
    end
  • プッシュ戦略(Push Strategy): メーカーが中間業者(卸売・小売)に対して人的販売や販売促進を行い、中間業者が消費者に製品を推奨・販売する。ブランド認知が低い製品、衝動購買型の製品に適する。
  • プル戦略(Pull Strategy): メーカーが広告やPRを通じて消費者に直接訴求し、消費者の指名購買を通じて中間業者に取り扱いを促す。ブランドロイヤルティが高い製品、計画購買型の製品に適する。

実際には多くの企業がプッシュとプルを併用しており、その配分は製品カテゴリーやPLCの段階に応じて調整される。

消費者の態度変容モデル

プロモーションの効果を理解するために、消費者が製品認知から購買に至るまでの心理的プロセスを段階的に捉えるモデルが提唱されてきた。

AIDMAモデル(サミュエル・ローランド・ホール, 1920年代)

マス広告時代の消費者行動を説明する古典的モデルである。

段階 英語 内容
A Attention 注意——製品の存在に気づく
I Interest 興味——製品に関心を持つ
D Desire 欲求——製品を欲しいと感じる
M Memory 記憶——製品を記憶に留める
A Action 行動——購買行動を起こす

AISASモデル(電通, 2004)

インターネット時代の消費者行動を反映したモデルであり、検索(Search)と共有(Share)の段階が加わった点に特徴がある。

段階 英語 内容
A Attention 注意——製品の存在に気づく
I Interest 興味——製品に関心を持つ
S Search 検索——能動的に情報を探索する
A Action 行動——購買行動を起こす
S Share 共有——購買経験をSNS等で共有する

AISASモデルの示すように、デジタル環境下では消費者自身が情報の探索者かつ発信者となる。このため、企業は一方向的な広告だけでなく、検索エンジン最適化(SEO)、口コミ管理、SNSマーケティングなど双方向的なコミュニケーション設計が求められるようになった。


まとめ

  • マーケティング・ミックス(4P)は、STPで定めた戦略をProduct・Price・Place・Promotionの4要素として具体化するフレームワークであり、マッカーシー(1960)によって体系化された
  • 4Pは売り手視点のフレームワークであり、ラウターボーンの4C(顧客価値・顧客コスト・利便性・コミュニケーション)と相互補完的に活用される
  • 製品戦略では、コトラーの3層モデル(中核便益・実体製品・拡大製品)による構造理解、PLCの段階に応じた戦略適応、新製品開発プロセスの管理が重要である
  • 価格戦略は収益を直接左右する要素であり、コストベース・競争ベース・価値ベースの3アプローチと、新製品におけるスキミング/浸透の選択が基本的な意思決定となる
  • 流通戦略はチャネルの段階数と幅(開放的・選択的・排他的)の設計、およびチャネル・コンフリクトの管理が中心的課題である
  • プロモーション戦略ではプロモーション・ミックスの最適配分、プッシュ/プル戦略の選択、AIDMAからAISASへの消費者行動モデルの変化への対応が求められる
  • 4Pの各要素は独立ではなく相互に整合的でなければならず、STPとの一貫性を保つことが戦略的成功の鍵である
  • Section 4ではブランド戦略と顧客関係管理を扱い、4Pを横断する長期的な価値構築の視点を検討する

用語集(Glossary)

用語 英語表記 定義
マーケティング・ミックス Marketing Mix 標的市場で望ましい反応を引き出すためのマーケティング諸手段の組み合わせ。4Pが代表的枠組み
4C Four Cs ラウターボーンが提唱した買い手視点のフレームワーク。Customer Value, Customer Cost, Convenience, Communication
製品の3層モデル Three Levels of Product コトラーによる製品構造モデル。中核便益・実体製品・拡大製品の3層で構成
製品ライン Product Line 機能・顧客層・価格帯等の共通性を持つ製品群
プロダクト・ミックス Product Mix 企業が提供する全製品ラインの総体
製品ライフサイクル Product Life Cycle (PLC) 製品の市場導入から撤退までを導入期・成長期・成熟期・衰退期に区分するモデル
スキミング価格戦略 Skimming Pricing 高価格で市場投入し価格感応度の低い層から利益を先行回収する戦略
浸透価格戦略 Penetration Pricing 低価格で市場投入し短期間で大きなシェアを獲得する戦略
ダイナミックプライシング Dynamic Pricing 需要・競合・在庫等に応じてリアルタイムに価格を変動させる手法
開放的流通 Intensive Distribution できるだけ多くの販売拠点に製品を配荷するチャネル政策
選択的流通 Selective Distribution 一定基準を満たす販売拠点を選別して配荷するチャネル政策
排他的流通 Exclusive Distribution 限定された販売拠点に独占的販売権を付与するチャネル政策
チャネル・コンフリクト Channel Conflict チャネル構成員間の利害不一致から生じる対立
プロモーション・ミックス Promotion Mix 広告・販売促進・PR・人的販売・ダイレクトマーケティングの組み合わせ
プッシュ戦略 Push Strategy 中間業者に働きかけて消費者への推奨販売を促す戦略
プル戦略 Pull Strategy 消費者に直接訴求し指名購買を通じてチャネルに取り扱いを促す戦略
AIDMA AIDMA Attention→Interest→Desire→Memory→Actionの消費者態度変容モデル
AISAS AISAS Attention→Interest→Search→Action→Shareのインターネット時代の態度変容モデル

確認問題

Q1: 製品ライフサイクル(PLC)の4段階それぞれにおいて、企業が重視すべきマーケティング戦略目標と、その目標を達成するための具体的施策を説明せよ。

A1: 導入期は認知獲得と試用促進が目標であり、大規模な広告投資やサンプリングを行う。成長期は市場シェアの最大化が目標であり、製品改良・ライン拡張と流通チャネルの拡大を進める。成熟期は利益維持とシェア防衛が目標であり、製品差別化や新セグメント・新用途の開拓(市場修正)を図る。衰退期はコスト削減と収穫が目標であり、製品ラインの縮小や撤退判断を行い、残存者利益の獲得を目指す。

Q2: スキミング価格戦略と浸透価格戦略の選択基準を、市場の価格弾力性・規模の経済・競合参入障壁の観点から比較して論じよ。

A2: スキミング価格は、価格弾力性が低い市場(高価格でも需要が大幅に減少しない)、少量生産でもコスト不利が小さい場合、品質やブランドイメージが高価格を正当化できる場合に適する。ただし高い利益率が競合の参入を誘引するリスクがある。浸透価格は、価格弾力性が高い市場(低価格が需要を大きく喚起)、規模の経済効果が大きい場合に適する。低価格により競合の参入意欲を抑止する効果がある一方、初期の利益は小さく、投資回収に時間を要する。

Q3: プッシュ戦略とプル戦略はそれぞれどのような製品・市場状況において有効か。また、両者を組み合わせる意義を述べよ。

A3: プッシュ戦略は、ブランド認知が低い製品、消費者が店頭で購買決定を行う衝動購買型の製品、BtoB取引など中間業者の推奨が重要な場面に有効である。プル戦略は、ブランドロイヤルティが高い製品、消費者が事前に購買計画を立てる計画購買型の製品に有効で、消費者の指名購買を通じてチャネルの取り扱いを促進する。両者の併用により、チャネル側の積極的な取り扱いと消費者側の需要喚起を同時に実現でき、製品の市場浸透を加速させることが可能となる。PLCの段階に応じてその配分を調整する(導入期はプッシュ重視、成長期以降はプル重視など)ことが実務上重要である。

Q4: ある高級時計メーカーが日本市場に新製品を投入する場合、チャネル政策(開放的・選択的・排他的)のうちどれを採用すべきか。理由とともに、想定されるチャネル・コンフリクトとその対策を論じよ。

A4: 高級時計は専門品に分類され、ブランドイメージの維持と購買時の専門的な接客が重要であるため、排他的流通または選択的流通を採用すべきである。排他的流通であれば、正規代理店に独占的販売権を付与することでブランド価値の毀損を防ぎ、販売員教育やアフターサービスの品質を統制できる。想定されるコンフリクトとしては、メーカーがECサイトを通じた直販を開始した場合の正規代理店との垂直的コンフリクト、また並行輸入業者による価格破壊に伴うマルチチャネル・コンフリクトがある。対策としては、オンラインと実店舗の役割分担の明確化(オンラインは情報提供、実店舗は購買体験)、正規品の保証・アフターサービスによる差別化、テリトリー制の導入による販売地域の調整が挙げられる。